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家具と並んで、現代でも新鮮な驚きを与えてくれるイームズ作品に映画があります。
「チャールズ&レイ・イームズ 創造の遺産展」会場でも一部を紹介していますが、イームズ・オフィスは28年間で130本近い短編映画を制作しました。中でも最も有名なのが、「パワーズ・オブ・テン」(1977年)という作品です。
芝生で男性が昼寝する姿を上から映すシーンで始まるこの映画は、カメラがどんどん遠ざかり、公園の遠景、地球、太陽系、銀河系、ついには宇宙の果てまで到達します。続いてカメラは逆方向にどんどん近づいて男性のシーンに戻り、今度は彼の手のアップ、細胞、DNA、原子、電子、クオークの世界に入り込んで行きます。
ありふれたのどかな風景から少し視点を変えるだけで、はるか宇宙にも自分自身の中へも無限に広がってゆく未知の領域。この映画は、科学は決して遠い世界の話ではなく、我々の日常の中にあることを物語っています。
科学は単なる学問ではなく、我々が生きるためにこそ探究されるものだと伝えているようです。 しかし、この映画の何よりの魅力は「面白いこと」です。壮大なドラマがわずか9分間の短編に凝縮され、スピーディーな展開は目が離せません。
イームズ・オフィスはIBMやポラロイドといった当時のハイテク企業の発注で、製品のPRや社員教育用のフィルムを多く制作していますが、わかりやすさ、誰でも楽しめる面白さが第一に考えられています。
インスタントカメラのPR映画ではその特徴を生かした遊び方をいくつも提案し、コンピューターについては機械への親近感を抱かせるためにコメディードラマ、人形劇、アニメーションまで多種多様な手法を工夫しています。
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子供の頃から理工系が好きだったチャールズは、科学や技術に親しむことは、新製品の説明書を読んだり丈夫な家具を選んだりする助けになり、日常生活に役立つということを知っていて、その事実を社会一般の人々にも分かって欲しいと強く願っていたのです。そのための最高の近道は、楽しんでもらうこと。夢中になれるほど楽しい体験をすれば、知識は自然に頭の中に染み込んでしまう。これが、イームズ夫妻が何かを伝えたいと考えた際のやり方でした。
イームズ夫妻は、アメリカ政府の要請で、冷戦下のモスクワにアメリカ文化を紹介するためのマルチスクリーン映画「アメリカの光景」(1959年)を制作しています。「ロシアでもアメリカでも夜空には同じ星が輝いている。空から見下ろす街は、
同じように見えているはず…」というナレーションで始まり、食事風景、教会に通う人々、マリリン・モンローの笑顔、ロッキー山脈、摩天楼など2200枚ものアメリカを映したスチル写真が軽快な音楽にのって次々と流れ、友愛のメッセージをこめた忘れな草のショットで締めくくられるこの映画に、モスクワ市民は喝采しました。アメリカ政府は、国力を誇示する、違う種のプロパガンダ映画を期待していたと言います。
しかし幸いにも完成したのは夫妻がフィルムを携えてモスクワに向かう当日ぎりぎりだったため、観衆の心に飛び込むイームズの方法論がそのまま通ったのです。チャールズ自身も後年、「こちらから意見を求めなければ、皆忙しくて気が回らないことがあるからね」とこの時の状況を語っています。
イームズが愛される理由は、一般的な普通の人々の生活を豊かにするためのデザインを創り続けたからでしょう。そして2人のデザインとは、チャールズの科学知識をレイの美的感覚で彩り、レイの思い描く美をチャールズの技術力で現実の形に変えることでした。
テクノロジーとメンタルケアの両立が大切とされるこれからの時代、イームズの魅力が、さらに多くの方に理解していただけることを願ってやみません。
読売新聞大阪本社 文化事業部 天埜実代子

「チャールズ&レイ・イームズ」展
2005年 10月8日(土)〜12月11日(日) 目黒区美術館
主催:読売新聞大阪本社
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